Namd™ ナノ分散カーボンナノチューブを炭素繊維へ均一複合化する技術 Namd™ ナノ分散カーボンナノチューブを炭素繊維へ均一複合化する技術

1. Namd™

1-1.プラスチック材料と繊維強化プラスチック(FRP)

プラスチック材料は軽量であり、腐食にも強く、加工性もよいことから日用品から産業用途に至る種々の材料として広く使われています。
しかし、耐久性の必要な部品や高強度が必要な用途については、金属材料として取って代わることはできません。

例えば、引っ張り強さという面においては、ロープやワイヤーといった繊維からなる材料がありますが、この繊維材料とプラスチックに複合化することにより、繊維同等以上に引張強度は強く、柔軟性は樹脂のように維持した複合化前の材料の特徴を併せ持ついいところどりの材料を作り出すことが可能となります。

この繊維強化プラスチック(FRP)材料の開発によって、人類は木材や竹のような軽量高強度でありながらも、工業的に生産が可能な材料を作ることが可能となりました。

1-2.カーボンナノチューブ(CNT)の特徴

カーボンナノチューブ(CNT)は、その存在を日本人が発見し、世界各地で多くの研究がなされてきました。

ダイヤモンドや黒鉛と同じく、炭素からCNTは出来ており、その構造は炭素原子が六角形の各頂点に位置する結合状態で作られる平面形状のグラフェンシートを筒状に丸めた形状をしています。このCNTの種類としては、筒形状が1層のSWNTと複数層からなる多層CNTがあります。

CNTの直径はナノスケール(ナノはミリの1000分の1)であるのに対して、ミリスケールの長さとなることもある細長い形状のナノ材料です。

他の材料と比較して、CNTは最も比強度(単位重量あたりの引張強さ)の高い材料として知られており、宇宙エレベーターの材料候補となるなど、夢の先端材料の1つです。

1-3.炭素繊維(CF)とCNT複合炭素繊維(Namd™糸)

炭素繊維(CF)はその名前の通り、炭素から成る繊維で、一般的には直径5~7μmの繊維が束なった、マルチフィラメントのCFトウの形で工業的に製造されていることが多いです。

工業的に用いられるCFの多くは、1~3万本の束からなるレギュラートウやさらに本数の多い束から成るラージトウの形で提供されています。CFトウはエポキシ樹脂などのプラスチック材料の強化繊維として用いることで、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)となり、その軽量・高強度という特徴を活用すべく、スポーツ用品から航空機や人工衛星の材料など、幅広く活用されています。

個々のCFの表面にCNTを均一な膜にコーティングする技術がCNT複合炭素繊維技術のNamd™です。レギュラートウのNamd™糸においては、1~3万本のCF束を形成する個々のCFすべてが、均一にCNT膜でコーティングされています。

第2世代(2-Generation)のNamd™である2G-Namd™においては、CF表面にコーティングするCNT膜を不織布のように形成することで、CNT膜の強度を高めています。CNT膜の強度を高めることによって、Namd™糸を扱う工程時の摩擦や、CFRP成型時の樹脂流動によるCF表面から樹脂へのCNT膜剥離や分散を防ぎ、多種多様なCFRP成形方法に適用可能としています。

CNT膜に用いられているCNT量は、CFRP全体の0.3%以下と微量でありながらも、CF表面全体を均一に覆うことで、Namd™の独自性能を発揮することを可能としています。

1-4.CFRP成型中間材料としてのプリプレグ(PPG)

炭素繊維強化プラスチック(CFRP)に用いられる炭素繊維は、一般的にレギュラートウと呼ばれる1~3万本のフィラメントの束からなる連続繊維束の形態にて製造されています。

直径が5~7μmの繊維が束なったマルチフィラメントの繊維間へ樹脂を含侵して成形する必要があります。あらかじめ、繊維束内部へ未硬化樹脂を含侵してシート状にしたプリプレグ(PPG)という中間材料が開発されることによって、スポーツ用品や航空機などに広く適用されることになりました。

Namd™-CFも未硬化のエポキシ樹脂などの未硬化樹脂とをシート化したPPGにて提供を行っています。

現在、下表に示される代表的なNamd™-PPGが提供可能です。

PPG 炭素繊維 マトリクス樹脂 (※2) 標準梱包量 (※2)
幅[mm] CF引張弾性率 [GPa] FAW[g/m²] RC[%] 樹脂種 巻長[m]
500 230 ~75(※1) 30~35 130℃硬化
エポキシ
100
80~ 30~35
150~(※1) 28~35
294 100~ 28~35
150~(※1) 28~35
1000 230 100~130(※1) 30~35 130℃硬化
エポキシ
50、100
294 100~130 (※1) 30~35

※1:条件出しが伴うため、要相談 ※2:適応製品・必要量により、要相談

1-5.通常CFRPとNamd™-CFRPの構造比較

通常のCFRPは、CF束内部へ樹脂が入り込み、CF-CF間を樹脂が充填された構造になっています。Namd™糸を樹脂と複合化してCFRPにすると樹脂はCF-CF間に樹脂が充填されるだけではなく、CF表面に形成されたCNT膜の内部へも樹脂は含侵されています。

この結果、Namd™-CFRPには、CFと樹脂の界面部分に「CNT+樹脂」の層が形成され、CF/CNT+樹脂/樹脂の「階層構造」を持つことになります。

通常のCFRPにおけるCF-樹脂界面では、弾性率の高いCFと桁違いに低い弾性率の樹脂の界面が存在するため、外部からの応力になどによる変形時は界面部分に応力集中が生じて界面に剥離破壊が生じることもあります。

Namd™-CFRPの場合は、界面に高い弾性率のCNTと弾性率の低い弾性率の樹脂が複合化したことによって、最終的にCFと樹脂の中間の弾性率の層をCF-樹脂界面して形成して、界面への応力集中の回避に役立っていると考えられています。

2. スポーツレジャー用途

2-1.Namd™-CFRP特性①「しなり量」

通常CFRPとNamd™-CFRPについて、同じ弾性率となる試験片を準備して、試験片の一方の端を固定し、もう一方の端に上部から錘を落とした時の様子を観察すると、Namd™-CFRPの方が大きくしなり、変形する様子を確認することができます。

これは、Namd™の特徴的な性質の1つで、早い速度で変形させた時に通常のCFRPは固くなる現象があるのに対して、Namd™-CFRPは硬くなりにくい特性を持つことに起因しています。

通常のCFRPは、衝撃に近い高速変形時には樹脂のもつ性質の1つであるクリープと呼ばれる遅延現象によって変形にブレーキがかかるために硬くなり、「しなり量」が小さくなります。Namd™-CFRPの場合、CF-CF間が接近している部分では、CF表面のCNT膜が絡み合うことでズリ変形が出来なくなり、樹脂のクリープの遅延現象が小さくなります。この結果、樹脂特有の高速変形時の固くなる現象をNamd™-CFRPは抑えることができ、「しなり量」が大きくなると考えられています。

2-2.Namd™-CFRP特性②「しなり戻り速度」

通常CFRPとNamd™-CFRPの弾性率が同じ試験片を準備して、試験片の一方の端を固定し、もう一方の端を一定量にたわませた状態にして固定します。その後、試験片のたわませた端に錘を載せ、たわみを解放させると、試験片の復元力によって、錘は上方へ跳ね上げられます。錘の跳ね上げられた高さを比較すると、Namd™-CFRP試験片の方が高く跳ね上げられる様子が確認されます。これがNamd™の特性の1つである「しなり戻り速度」効果です。これは、Namd™-CFRP特有のCF-CF間におけるCNT膜の絡まりあいが引き起こす現象の1つです。

Namd™-CFRPの場合、CF-CF間が接近している部分では、CF表面のCNT膜が絡み合うことで樹脂層のズリ変形が少なくなります。その分の変形をCFの変形に頼ることになり、Namd™-CFRPは樹脂のクリープによるブレーキ効果を抑えることができます。その結果、「しなり戻り速度」が速くなると考えられています。

2-3.Namd™-CFRP特性③「大振幅時の振動減衰」

通常CFRPとNamd™-CFRPの弾性率が同じ試験片を準備して、試験片の一方の端を固定し、もう一方の端を一定量にたわませた状態から解放させると、振動現象が見られますが、Namd™の方が早く減衰する様子が確認できます。

このNamd™の振動減衰の仕方としては、振幅が大きな時のみ通常CFRPよりも短時間で減衰し、振幅が十分に小さくなると通常CFRPと同様の減衰性になる特徴があります。

Namd™-CFRPが振幅が大きな時に早く減衰する現象は、CF-CF間のCNTによる拘束効果が発揮され、変形に対する抵抗となることに起因すると説明できます。これに対して、振幅が十分に小さくなった状況では、CNTの拘束効果が得られないことによって、通常CFRPと同様の振動減衰結果となったと考えられます。

2-4.スポーツ用品へのNamd™の適用事例

スポーツ用品における材料は、アルミやジュラルミンといった軽量高強度な金属材料から、さらなる軽量化のために繊維強化プラスチック(FRP)が一般的に用いられています。最近では、CFRPが用いられていますが、プラスチックの特徴の一つである速い速度での変形や、極低温時には硬くなるといった欠点があります。例えば、ゴルフクラブの高速スイング時は、通常のCFRPの場合は硬くなってしなり量が減るのに対して、Namd™は大きく「しなる」ことによって、より大きなエネルギーを貯蔵し、速く「もどる」ことで、ボールに衝突する時点でのヘッドスピードが大きくなり、ボールの飛距離が伸びることを期待できます。

また、ラケットのシャフトなどへNamd™-CFRPを適用する場合は、スイング時にゴルフクラブ同様の「しなり戻り」効果が得られるため、同じスイング速度でも、打撃力が上がることになり、Namd™-CFRPを適用したラケットを使用するプレイヤーがゲームを優利に進めることを期待できます。

シャフトをよりしならせようとすると、選定する材料の弾性率を低くする方法が取られるため、柔らかいシャフトとなってしまいます。そうすると、十分しならせても弾性率が低くなり、反発力がません。このように従来の材料では、「しなり」と「戻り(反発力)」はトレードオフの関係性でしたが、Namd™-CFRPでは両立可能となりました。

2-5.Namd™特性の発現機構

Namd™特性が発現する原理について、CFが一方向に並んだ試験片に対して、曲げ試験を行っているケースをモデルに、通常のCFRPとNamd™-CFRPの試験片の内部で生じる違いの観点から、説明します。

試験片内部のCF配列をX線CTなどの非破壊分析機器を用いて観察すると、繊維は均等に配置しているのではなく、繊維同士が接触している部分と離れている部分があるなど、多くの偏りが存在することが確認できます。

3点曲げにて試験片を曲げた場合、試験片の凹部側には圧縮応力が生じ、凸部側には引張応力が生じます。その結果、通常CFRPの場合、CF-CF間のズリ変形によって、樹脂に大きなせん断応力がかかることになります。これに対し、Namd™-CFRPの場合はCF表面にCNTが存在しているため、CF-CF間距離が狭い部分は、CF表面のCNT膜同士の絡まり合いにより、CF間の疑似架橋点が存在するため、CF間樹脂部分のズリ変形が発生しません。その結果、樹脂のせん断により生じるクリープ現象が発生せず、CFの弾性変形が優勢となります。これらの結果から、通常CFRPとNamd™-CFRPは異なる「しなり戻り」の特性が発生していると考えられます。

3. 産業用途(航空・宇宙)

3-1.CF単繊維に対するNamd™の補強効果

通常のCFは、その製造工程や樹脂との複合化の工程において、多くの微細な表面欠陥を生じる機会があります。

CFは引張強度が高い材料ですが、引張応力下においては、そのCF表面の欠陥部分を起点として、亀裂が内部へ進展して破断に至ります。Namd™の場合は、CFよりも引張強度の高いCNTを表面に膜形成させているため、表面欠陥起因の破断機会を減らすことができます。

実際に、通常の産業で用いられるグレードのCF単繊維について、通常CFとNamd™-CFの引張試験比較を行ってみると、Namd™-CFの方が数十%ほど強度が高い傾向となっていることが確認されています。

3-2.CFRP内のCF配置とNamd™適用時の特徴

通常のCFRP内の繊維断面が観察できる方向にて切断して、拡大観察を行うと、CFの分布に疎密バラツキがあることが分かります。

Namd™-CFRPの場合は、疎密バラツキが少なく、均一なCFの分布となっていることが分かります。これは、全てのCF間に対して、CNT膜由来の隙間が生じることに起因していると考えられています。自然界に存在する竹や木材といった材料を断面観察した際に見られる構造に近く、より理想的な複合材料構造になっているように見えます。

実際に、引抜成形法などによって、CFが一方向に並んだ棒状のCFRP試験片を製作し、通常CFRPとNamd™-CFRPの曲げ破壊を行ってみると、通常CFRPがささくれの多い竹ひごのような破壊形態となっているのに対して、Namd™-CFRPは大きくしなり変形したのちに、ささくれの少ないきれいな断面にて破壊することが確認されています。

3-3.CFRP中繊維の直径方向圧縮とNamd™の効果

通常のCFRPは繊維の直径方向への押しつぶし応力がかかった場合、CFと樹脂界面に沿って亀裂が進展し、破壊に至ります。

Namd™-CFRPについては、CF周囲のCNT膜によって、界面剥離が抑制されるため、高強度化傾向となります。特に繊維体積含有率(Vf)が、70%付近まで高い場合、隣り合うCF同士が十分に近い距離となることによって、CF間をCNT+樹脂がつなぎとめることとなり、2割以上の強度向上を行うことも可能となります。

3-4.CFRP板の曲げ試験におけるNamd™の効果

プリプレグを積層して加熱成形することによって作製されたCFRP板の曲げ試験時の特徴は以下の通りです。

CFRP板の試験片に曲げ荷重をかけた場合、通常CFRPとNamd™-CFRPの試験片では曲げ破壊に至るまでの状況と破壊形態が異なります。通常CFRPの場合は、曲がった試験片の内側に座屈と呼ばれる現象により、凸部が生じたのちに破壊に至ります。

この現象は、CFRP板を形成する層間の剥離によって内側にふくらみが生じることが原因です。それに対して、Namd™-CFRPは、層間が剥離しにくいため、大きくしなり変形したのちに、座屈のふくらみが少ない破壊形態となることが確認されています。

3-5.CFRPの疲労耐久性とNamd™の効果

Namd™-CFRPのCNT膜は亀裂進展を阻害する役割も持つを考えられますので、最も亀裂が進展しやすい界面にCNT膜が存在するNamd™-CFRPの構造は、亀裂の進展によって破壊が生じる疲労破壊に対して高い効果が得られると考えられます。

実際に、通常のCFRPとNamd™-CFRPについて、平板試験片の片方の端を固定し、他方の端に繰り返し荷重をかける試験を行ってみました。その結果、破壊に至るまでの回数は、Namd™-CFRPの方が1~2桁多くなることが分かっています。

3-6.産業用途部品へのNamd™の適用事例

近年では電気自動車やドローンといったモビリティ開発において、航続距離の確保などの側面において、モーター高効率化検討が進められていますが、その解決策の一つとして、モーター回転速度の高速化が検討されています。その回転数が数万rpmクラスとなると、回転子の表面にかかる遠心力は膨大となるため、従来から使用されてきた金属は使用できず、比強度の高い材料としてCFRPの採用検討が進んでいます。

回転子の表面を覆うスリーブとして、Namd™-CFRPを適用した場合、成形条件によっては通常のCFRPよりも2割以上の強度向上を見込めるため、回転数をさらに上げることが可能となります。また、Namd™-CFRPの構造は、亀裂の進展によって破壊が生じる疲労破壊に対しても耐久性が得られるため、製品の信頼性や耐久性を向上させると期待されます。

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